参加者の日記帳 ー ワークショップ

報告
バロック教会音楽ワークショップ(5月1日〜4日)

合唱:バッハの森クワイア向上の画期的なきっかけ  田中明彦

男声合唱 今年は何年かたった後でふと思い出してみると、あの年が大きな向上のきっかけだったな、と思えるようになるという予感がする。昨年のワークショップ以来、石田友雄先生と比留間恵さんの一貫した方針の下に、各パートが自発性をもって「歌う」ということに取り組んできた。多声楽の各旋律をいかに捉え、意味を理解した言葉として歌うかということで、指揮者と各パート、各パートと各パートのつながりという三角形が、曲の進行に合わせて現れては消えるという状況が見えてきた。ドイツ語の歌詞については、少なくともキーワードは、一々日本語に訳さなくても、意味を伴ってすとんと心に落ちてくるようになったと思える。事実、総括のとき、ドイツ語が良くなった、とヤンがコメントしてくれた。勿論、反省点は多々あるが、特にコンサートを通してのフィジカルコントロールの難しさを痛感した。ともかく今回のワークショップは、明日につながるものだったと思う。

声楽:暗譜による自然な表現と旋律の受け渡し  三縄啓子

声楽レッスン 3曲の課題曲は、いずれもアンサンブルのための美しい音楽だった。レッスンは、マインデルトのアクティヴな指導を、比留間恵さんのチェンバロと、奈良から駆けつけた武藤彰良氏のテオルボの伴奏付きで受ける幸せな時間だった。今年は特にマインデルトから、暗記、暗譜をして、身体の内側から自然に感情を表現すること、アンサンブルでは、ピンポンのように各パートで旋律の受け渡しを大切にすることが求められた。ソプラノ3人、アルト2人、テノール1人の受講生がいろいろな組み合わせで歌ったが、パワフルな体育会系組あり、新妻お上品組ありと様々で、しばしば笑いに包まれた楽しいレッスンだった。

オルガン:内容を理解して歌わせる  海東俊恵

オルガンレッスン オルガンのレッスンでは、「打鍵の後のリリースの仕方、リラックスについて」、「曲中の様々な音型をみつけ、それが何を象徴しているか、どう表現するか」、「常にフレーズの始まりと終わりを意識して歌わせること」などを学んだ。最初、馴染みのない古い曲をどうやって弾けばいいか分からなかったが、「コラールの内容を理解し、それをオルガンでどう表現していくか、オルガンの響きや反応を身体で感じ取り、生き生きと歌う」というヤンの実技レッスンを受けた後では、何か楽に自由に弾けるようになったと感じた。

合同レッスン:イントネーションとドイツ語の音素  深谷律雄

クワイアレッスン 今年、新しく始まった、声楽とオルガンの合同レッスンでは、ヤンがコラールのオルガンによるイントネーションと和声付けの基礎、マインデルトがドイツ語の音素と交唱を指導した。イントネーションは、いくつかの基本的なパターンを例示して、それに倣って受講生が即興で演奏するという、なかなか高度な授業だったが、結構、皆こなしているので驚いた。ヤンの準備したテキストが充実していた。マインデルトはドイツ語の音素を母音と子音に分けて丁寧に伝授してくれた。特に日本人に出来ない3種の e(広い、狭い、曖昧)の区別がよく理解された。交唱は会場の両側に2列に並び、“Meine Seele”を楽譜を見ないで歌う練習をした。練習後、翌日のレッスンに備えて、皆、必死になって歌詞の暗記をしていた。

教会音楽コンサート:聖書の言葉を語り伝える音楽  西澤節子

2重唱 中世の修道院を思わせる男声の朗唱で始まる。二重唱とオルガンは物語を聞いている感じ。聖書朗読に沿って歌われる合唱は、聖書物語の流れを伝える。会衆斉唱をリードするヤンのオルガンは、力強くはっきりと、会衆を歌わせる役目を示す。
 バッハの森の教会音楽コンサートは、これらの音楽が生まれた時代に戻って、聖書の言葉を語り伝える役割をもった、その音楽本来の響きを伝える。ひととき中世の民衆になって、大聖堂の中にこだまする、修道僧や聖歌隊の歌声、オルガンの響き、会衆のざわめきなどを想像する素敵な時だった。